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人種

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(最終更新 2007年11月15日 (木) 00:10。)

人種(じんしゅ)とは、ヒト属を分類したもの。基本的には生物学的な用語である。

生物学的には、ヒト属を、ホモ・サピエンス(現生人類)、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)、ホモ・エレクトス・ペキネンシス(北京原人)、などに分類する場合にはヒト属の種、ホモ・サピエンスをさす場合はヒト種といい、人種とは別の用語である。中途半端な理解は差別主義者を利する可能性がある。

言い換えると、ホモ・サピエンス種以外の人種が絶滅した現在の地球では、人類はホモ・サピエンス種の1種のみということになる。

ただし一般的には、現生人類(ホモ・サピエンス)を様々な理由から細分化し、人種として分類する場合が多い。

以下、一般的な人種の概念を説明する。

目次

概説

もっとも一般的な概念では、人種はおもに身体の表面的な特徴 (肌の色、顔つき、髪の色など) や遺伝的性質、および個人のアイデンティティなどをもとに決められるとされる。

歴史的には19世紀ドイツヨハン・フリードリッヒ・ブルーメンバッハによって初めて科学的な人種の分類がなされ、その後1950年代から、コーカソイドモンゴロイドネグロイドオーストラロイドといった分類がなされるようになった。 ただし、これらの人種分類では、肌の色や髪の色は分類に使われるものの、目の色や鼻の大きさ、身長などは分類に使われないことから、分類学における厳密性や正当性を欠いていると主張する者もいた。

最近では、このような外観的特徴に基づく人種分類が人種差別思想に少なからず影響を及ぼしたこと、遺伝的には同じ人種に分類される人々が必ずしも同じ外観的特徴を有していないこと、及び同じ人種とされる人々が必ずしも同じ文化を共有していないことなどの問題があり、DNA分析による遺伝学が進歩したことも加わって、人種と言う分類法は否定され、かわりに集団遺伝学や連続的な遺伝的特徴をあらわすクラインといった概念が用いられるようになってきている。

また、人類学者の中には自然科学的な「人種」という概念を否定し、人種は社会的要因よって構築された社会科学上の概念でしかないという説を提唱する者もいる。実際のところ、人種間での混血は可能なため、生物学的なとしては、どの人種もすべて同一のヒトという種に含まれる。つまり、生物学上は、人種というものは亜種以下の段階の差に過ぎない。すなわち自然科学上はさほど有効な概念ではないということになる。


*人種間の本質的優劣(とくに身体能力、知的能力)について公に議論することは、人種差別につながる可能性が高いことからタブーとされている。

伝統的な人種の分類例(肌の色)

アメリカ合衆国ではFBIが指名手配の犯人を、性別、身体的特徴、職業、国籍、人種にしたがって分類し、識別している。
アメリカ合衆国ではFBIが指名手配の犯人を、性別、身体的特徴、職業、国籍、人種にしたがって分類し、識別している。

生物学的には、人類は単一の種であるが、一般的には現在でも外見的特徴に基づいた人種分類がなされる場合がある。

※右の図に示された人々の人種は、左から、白人、黒人、ヒスパニック、アジア人。
上段は男性、下段は女性であり、伝統的な人種の分類に基づいている。
各国の先住民の皮膚色を分配したマップ。肌の色は居住する地域によって定まってくるため、伝統的な人種分類の根拠を否定するために使われている。
各国の先住民の皮膚色を分配したマップ。肌の色は居住する地域によって定まってくるため、伝統的な人種分類の根拠を否定するために使われている。
※右の図は、肌の等に着目した伝統的な人種分類法を否定する根拠としてしばしば使われるものである。肌の色は実際の居住地域によって定まってくるため(収斂進化)、肌色による分類に科学的根拠は無い。
※肌の色や風貌と実際の人種との関連性がないことは最近のDNA分析からも証明されている。
例えば、イラクイランなどの中東の人々や、インドパキスタンなどの南アジアの人々は、褐色の肌であるが、DNA分析によるとコーカソイド(白人)に分類される。

最新のDNA分析による分類例(人類集団の遺伝的系統-1)

High resolution of human evolutionary trees

この図は多型マイクロサテライトにより求められた人類集団の系統樹である。

この系統樹が意味するところは、最初にアフリカ人とその他の人種が分岐したこと、次にヨーロッパ人とその他の人種が分岐したこと、その次に東・東南アジア人とオーストラリア人が分岐し、最後の大きな分岐として東・東南アジア人からアメリカ先住民が分岐したということである。

この系統樹で見られた主要な特徴は、従来のタンパク質多型や最近の核DNAの多型によって明らかにされた人類集団間の系統関係と大筋において一致する。(外部リンクを参照)

最新のDNA分析による分類例(人類集団の遺伝的系統-2)

遺伝的近縁図

この図は世界の18人類集団の遺伝的近縁関係を23種類の遺伝子の情報をもとに近隣結合法によって作成された「人種」の遺伝的近縁図である。

この分析が証明する人種の系統は、(人類のアフリカ単独起源説を採用すれば)、アフリカン(ネグロイド)からコーカソイド(白人)が分岐し、コーカソイドからオセアニアン(オーストラロイド)・イーストアジアン(モンゴロイド)が分岐、そしてイーストアジアンからネイティブアメリカンが分岐した、と云うものである。日本人はイーストアジアン(モンゴロイド)に含まれており、外見だけではなく、DNAレベルでも、中国や朝鮮半島の人々に最も近い。

尚、この人類集団の近縁関係は上記の遺伝的系統樹と現在の人類集団の地理的配置に一致する。

「人種」が誕生した理由

最新のDNA分析が証明する、(一般的概念の)人種が発生した理由は、下記のとおりである。 (ただし生物学上は、現世人類は単一の種であることに注意)

1.人類のアフリカ単独起源説

DNA分析によれば、人類はアフリカで誕生した単一種である事が証明されている(人類のアフリカ単独起源説)。つまりアフリカで誕生した現生人類が、アフリカ大陸以外の諸大陸に移住し、何らかの要因で交流を絶たれ、独自に世代を重ねた結果、それぞれのDNA間に差異を生じたものが現在の(一般的概念の)人種である。


2.人種的境界と地理的境界は一致する(移動の妨げとなる自然環境が人種を誕生させた)

上述の「人類集団の遺伝的系統-1.2」によれば、最初にアフリカ人とその他の人種が分岐したこと、次にヨーロッパ人とその他の人種が分岐したこと、その次に東・東南アジア人とオーストラリア人が分岐し、最後の大きな分岐として東・東南アジア人からアメリカ先住民が分岐したことが分かる。

また、「人類集団の遺伝的系統-1・2」を世界地図に重ね合わせると、ネグロイドはアフリカ大陸、コーカソイドはユーラシア大陸のヒマラヤ山脈及びアラカン山脈の南西側(DNA分析によればインド・アラブ・トルコ人もコーカソイド(白人)である)、モンゴロイドはヒマラヤ山脈及びアラカン山脈の東および北側、オーストラロイドはオーストラリア大陸とスンダ列島周辺、そしてネイティブアメリカンは南北アメリカ大陸に分布することが分かる。

つまり、出アフリカを果たした現生人類の祖先が各大陸に移住した後、ジブラルタル海峡・地中海・スエズ地峡・紅海・ヒマラヤ山脈・アラカン山脈・中央アジアの乾燥地帯・ベーリング海峡等の自然環境により、それぞれ交流が遮断された地域が、そのまま現在の主要人種の居住地域となっている。


3.人種間の遺伝的距離は地理的距離に比例する

人種間の遺伝的距離は、対象となる人種と人種が居住する地理的距離に比例している。つまり、人類誕生の地であるアフリカに住むネグロイドと各人種との遺伝的距離は、各人種の住む地域のアフリカからの地理的距離に比例する

例:「人類集団の遺伝的系統-1・2」にある通り、アフリカ人との遺伝的距離がもっとも近いのはアフリカ大陸の隣接地である地中海沿岸のユーラシア大陸に住むコーカソイドであり、逆にもっとも遺伝的距離が遠いのは、アフリカ大陸から地理的に最も遠いアメリカ大陸に住むネイティブアメリカン(アメリカ先住民)である。

※アレキサンダー大王の東方遠征やモンゴル帝国の世界制覇、及び近代のヨーロッパ系白人の新大陸への移住等、近年の人種間交流は世界的規模で行われるようになってきた。さらに交通手段の発達による世界的人種間交流の促進、及び科学的知識の向上により、遺伝的にも概念的にも、一般的な意味での人種はなくなる方向に進むと思われる。

人種に対する間違った認識

日本でも外国でも、「人種」と「民族」という言葉の意味が混同されていることが多く、間違った認識が多く存在する。以下が、典型的な例である。

ユダヤ人
ユダヤ人は人種の名称の一つであると誤解されていることがある。しかし、ユダヤ人は人種を問わずユダヤ教の信仰を中心としたユダヤ文化を共有する民族の総称にすぎない。実際、現在のイスラエルに移住するユダヤ人には様々な人種が含まれており、且つ初期のユダヤ民族とされる人々も、歴史的に様々な人種との混血が進んでいる。
日本人
日本人については、長谷部言人のような著名な人類学者が「日本人種」の存在を主張した事もあるが、学会の主流をなす意見では、日本人は民族であり、日本人という人種は存在しないとされる。
日本人は、シベリア・朝鮮半島・中国大陸・東南アジアなどから移住してきた、様々なモンゴロイド系人種の混血であるという説が有力とされている。
アフリカ人
アフリカ大陸の住人は、周囲の自然環境の影響から肌が褐色であることが多いため、人種的にネグロイドであるという誤解を持たれている。しかし、ジブラルタル海峡をはさみヨーロッパと接する北西アフリカ(チュニジアモロッコアルジェリアなど)の住人は人種的にコーカソイド(白人)の特徴を強く受け継いでいる。
また、スエズ運河(古くは地続きといってもよい渓谷)をはさみ、アラブ人(人種的にはコーカソイド(白人))と交流が進んだ北東アフリカでは、エチオピアナイジェリアケニアなどかなり南の地域に至るまで両者の特徴を併せ持つタイプがみられる。
逆に、イベリア半島のポルトガル・スペインや南イタリアなどの南ヨーロッパ、及びアラビア半島をはじめとする中東地域(西アジア)の人々は、少なからずネグロイド的な特徴を持つ。

関連項目

外部リンク


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