日帝風水謀略説(にっていふうすいぼうりゃくせつ)は、韓国で金泳三政権時代に始まる国家レベルの都市伝説(陰謀論)である。その内容は、風水思想に基づき「日帝が民族精気を抹殺するために、全国の名山に鉄杭を打ち込んで地脈を断ち切った」というもの。
常識的に考えれば、そうした鉄杭は、測量や岩場の手すりのために打ち込まれたと考えられる。そもそも風水は、朝鮮では広く信じられていても、日本人にはあまりなじみがないため、すでに陰陽寮を廃し、近代文明を信奉する日本の官吏が風水に基づく事業を行ったとは考えられない。実際、謀略説は、地元の風水師の言い伝えなどに依ったもので、総督府の公文書などによる裏づけは一切取られていない。
なお、日本軍が行ったとされることがあるが、戦前、日本では、地図作製は陸軍が行っており、通常の測量活動を陸軍が行っていた。
金泳三政権下で国家事業に昇華した。金泳三政権は、1995年、いわゆる「光復50周年」を記念して、歴史立て直し事業を推進した。その中の一つとして鉄杭除去運動が内務部の主管のもと大々的に実施された。このことは、かつてスターリン体制下のソビエトで支持され、体制崩壊とともに否定への道をたどったルイセンコの学説、現代日本における「ゲーム脳」「フィギュア萌え族」のように、内容や方向性が社会の風潮や国家の方針などと合致するならば、本当に事実かどうか不明瞭でも「事実」とみなされる場合もありうることを示す一例といえる。