満州民族(満洲民族 まんしゅうみんぞく)は、現在の中華人民共和国東北地区(遼寧省・吉林省・黒龍江省)に発祥したツングース系民族。女真族のこと。17世紀に現在の中国・モンゴルの全土を支配する清を興した。同系のツングース民族にシボ族、ダウール族、オロチョン族がある。
「満州」の漢字は満州語の民族名Manju(マンジュ)の当て字で、元来は「満洲」と表記されていたが、現在の日本では一般に常用漢字をもって「満州」と表記することが多い。
満州民族の起こった地域は、西欧では満州民族の土地という意味でマンチュリア(Manchuria)と呼ばれ、漢語ではこれに対応して満州と呼ばれる。このため、とくに民族のことを指す場合は、満州民族・満州族・満州人・満人などと表記する。
現代は、中華人民共和国の55少数民族のひとつという位置づけをされている。中華人民共和国の現支配層を構成する漢民族は近代以前に満州民族の清王朝に支配されたという歴史的屈辱や、日本の支援で満州国という形でその悪夢が再現したという歴史的経緯から、満州民族の民族的覚醒を警戒し、その為に満州という言葉には極めて敏感である。また彼らは満州族ではなく満族(まんぞく, mn z, Manzu)と呼ぶ。2000年の人口調査では満族人口は10,682,263人であった。
かって中国を支配した清朝旗人の子孫であり、中国全土に散在する。満族の過半数は、遼寧省に居住しているが、河北省、吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、甘粛省、山東省にも分布し、北京、天津、成都、西安、広州、銀川などの大都市やその他中小都市にも居住する。
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満州民族の前身は、12世紀に中国の北半分を支配した金を立てた女真民族であり、女真以前にこの地方にいた粛慎、挹婁、勿吉、靺鞨の後裔であると考えられている。
民族名となったマンジュは、サンスクリット語のマンジュシュリー(文殊師利、文殊菩薩のこと)に由来する満州語で、元来は16世紀までに女直(女真)と呼ばれていた民族のうち、建州女直に分類される5部族(スクスフ、フネヘ、ワンギヤ、ドンゴ、ジェチェン)の総称であった。文殊菩薩を信仰していた部族が部族名を自称するに当たり、信仰する文殊菩薩の「文殊」という文字を使うのは恐れ多いとして「満洲」という当て字を使用し、後に「満州」になった。
これら諸部族がスクスフ部出身のヌルハチによって統一されると、ヌルハチの支配する国はマンジュ国(Manju gurun, 満州国)と呼ばれるようになり、さらにマンジュ国が海西女直4部、野人女直4部を併合して後金に発展したため、満州の名が広く女直全体の総称として用いられるようになった。ヌルハチは、満州語を表記するためにモンゴル文字を改良させて満州文字をつくり、満州民族文化を確立することに努めた。
ヌルハチの死後、後継者のホンタイジは女直を民族名として用いることを禁じ、「満州」(マンジュ)の民族名が定着した。「州」という文字がついていることで、現在では満州というと中国東北部やマンチュリアなどの地域…土地の名前のイメージが強いが、本来はあくまで民族名であり、土地の名前ではなかった。
ホンタイジは後金を満州・モンゴル・漢の3民族を、満州人である愛新覚羅氏の皇帝が支配する帝国に発展させ、国号を清と改めた。多民族国家である清のもとで、満州人は八旗と呼ばれる8グループに分けられた集団に編成されて、清を支える軍人・官僚を輩出する支配民族となる。
清は、1644年に明が滅びると万里の長城以南に進出して明の旧領を征服し、八旗を北京に集団移住させて中国全土を満州民族が支配する体制を築き上げた。清の歴代の皇帝は、漢民族が圧倒的多数を占める中国を支配するにあたっても、満州語をはじめとする満州独自の民族文化の維持・発展に努めたが、次第に満州語は廃れ、満州人の間でも中国語が話されるようになり、習俗も中国化していった。
逆に、中国を扱った映画などの作品で見られる辮髪や両把頭やチャイナドレスは元来は満州族の習俗であったものが清の時代に中国に持ち込まれたものである。清朝の統治者は明との戦争中、漢人の民族としての連帯感を弱めるため、また中国統一のため、1644年、明朝滅亡後に満州族の髪型と満州族の服装を強制し、漢民族の服飾を身に付けることを禁止した。史上名高い剃髪易服(髪を剃り、服を替える)である。
一方、満州民族の故地である中国東北地区(満州)は、皇帝の故郷として保護され、漢民族の移住は強く制限されていたが、清末には漢民族の農民が入植するようになり、漢民族人口が急増して満州民族をはじめとするツングース系諸民族は人口の上でも生活範囲の上でもまったく追いやられてしまった。
1932年には日本の手によって、清の最後の皇帝だった愛新覚羅溥儀を執政(のちに皇帝)として満州国が立てられるが、満州国は日・朝・満・蒙・漢の5民族による五族協和を理念としており、満州国の内部において自国が満州民族の国家として意識されていたわけではない。しかしながら満州民族においては建国後に帝政期成運動を起こすなど、満州国に民族の復権を期待する向きも一部ではみられた。
第二次世界大戦後に成立した中華人民共和国は、民族識別工作を行って少数民族を中国の内部で一定の権利を有する民族として公認した。この過程で、かつての旗人(八旗に所属した者)の後裔にあたる人々が満族とされる。
満族の人々の間では、現在はごく少数の老人を除いて満州語を話す者はほとんどおらず、伝統宗教のシャーマニズムの信仰もほとんど残っていない。このような状況から、満州民族は、言語的・文化的に中国社会に同化され、失われつつある先住民族であるとも見なされうる。1980年代以降は政府の少数民族優遇政策から積極的に民族籍を満族に改めようとする動きがあって、満族の人口は10年あまりのうちに3.5倍以上に増加しているが、これは満族になる事で少数民族として優遇措置の恩恵を受けようとする人が多いためといわれており、満州語を学習しようとする人が増加している訳ではない。しかし一方で、固有の文化を失いながらも満州民族の民族意識はとても強いともいわれている。
自治州はないが、自治県がいくつかある。
満州民族の最も顕著な形質的特徴は、顔立ちがはっきりしており、目が小さく、一重瞼であるか二重であっても判別できないくらいのものである。眼の間隔が比較的近く、直鼻型、長方瞼型の人が比較的多く、肌の色は比較的浅い。もう1つの特徴は、B型の血液型が特に多いことで、総人口の40%前後を占める(漢族人中のB型の比率は、人口の20%強しか占めない)。
満州民族の姓氏は、本来、愛新覚羅等に見るように満州語に基づいたものだったが、現代満族の多くは、中国式の姓氏を用いている。これは、清末期の滅満興漢の風潮、第二次世界大戦後の漢奸狩り、文化大革命等による中国当局の弾圧を避けるための方便であったと考えられる。しかしながら、愛新覚羅は金または趙に、完顔は王に、富察は富、傅または付に、李佳は李に、何叶勒は何または賀に、顧爾佳は顧に、関爾佳は関のように、改姓の際にも一定の原則に従っている。現代満族は、「氏族-哈喇漢訳表」と照らし合わせることによって自分の本来の姓氏を知ることができるようになっている。
満州民族は、清朝時代に支配者階級であった為1990年代初期まで漢民族や他民族に比べて教育水準が高かった。1990年の人口調査資料によれば、満族人口1万人当たりの大学進学者数は1,652.2人で、全国平均水準139.0人、漢族平均水準143.1に比べて遥かに高かった。また、15歳以上で文盲・半文盲が占める比率は、満族は1.41%で、全国22.21%、漢族21.53%よりも遥かに低く、中国各民族中で最低であった。2007年10月現在のデータが不明。
言語はアルタイ語族の満州語が民族言語であるが、漢民族優遇の中華人民共和国による漢化政策の為に満州語の使用が制限禁止された結果、民族の言葉や風習を喪失し準漢民族的な状態に置かれている。文化革命時の弾圧も影響。現在では清朝国境警備隊として新疆ウイグル地区に移住した満州人の子孫や黒竜江省の僻地の満族村で少数の老人が満州語を話すのみの危機的状態である。
期間は、中国の時代区分で示している。
| 中華民族(中華人民共和国の民族識別工作による) |
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アチャン族(阿昌族) - ペー族(白族) - バオアン族(保安族) - プーラン族(布朗族) - プイ族(布依族) - 朝鮮族 - ダウール族(達斡尔族) - タイ族(傣族) - ドアン族(德昂族) - ドンシャン族(東郷族) - トン族(侗族) - トーロン族(独龍族) - オロス族(俄羅斯族) - オロチョン族(鄂倫春族) - エヴェンキ族(鄂温克族) - コーラオ族(仡佬族) - ハニ族(哈尼族) - カザフ族(哈薩克族) - ホジェン族(赫哲族) - 回族 - 高山族 - 漢族 - ジーヌオ族(基诺族) - キン族(京族) - チンプオ族(景頗族) - キルギス族(柯尔克孜族) - ラフ族(拉祜族) - リー族(黎族) - リス族(傈僳族) - ローバ族(珞巴族) - 満州族 - マオナン族(毛南族) - メンパ族(門巴族) - モンゴル族(蒙古族) - ミャオ族(苗族) - モーラオ族(仫佬族) - ナシ族(納西族) - ヌー族(怒族) - プミ族(普米族) - チャン族(羌族) - サラール族(撒拉族) - シェ族(畲族) - スイ族(水族) - タジク族(塔吉克族) - タタール族(塔塔尔族) - トゥチャ族(土家族) - トゥ族(土族) - ワ族(佤族) - ウイグル族(維吾爾族) - ウズベク族(烏孜別克族) - シボ族(錫伯族) - ヤオ族(瑶族) - イー族(彝族) - ユグル族(裕固族) - チベット族(蔵族) - チワン族(壮族) |