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C-X
C-X (Cargo aircraft-X) は、防衛省・航空自衛隊における「次期輸送機」の一般名称である。
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防衛庁(現防衛省)では、国産のC-1(25機)と輸入したC-130H(16機)を戦術輸送機としているが、C-1が耐用飛行時間を迎えるため、後継が検討された。日本国内の航空産業の技術育成の観点から、2000年(平成12)末に中型戦術輸送機の国産化を決定、MPA/P-X(XP-1固定翼哨戒機)と同時に開発し、一部部品や治工具の共用によって両機種あわせた開発費を抑えることとされ、その額は両機合わせて3400億円と見込まれた。
平成13年度予算の要求53億円は満額が認められ、2001年(平成13)初めよりエンジンの選定を開始、また防衛庁技術研究本部(技本)によって研究が行われた。5月25日に航空メーカーを選定する旨を官報にて告示、30日まで希望メーカーを募集した。応募した8社を招いて31日に説明会が開催され、7月31日午後5時を期限として、スペックの提出を行わせた。なお、1社は希望を撤回した。
主契約では川崎がP-X・C-Xの両機製作を希望、富士重工業が両機製作の新会社設立を提案、三菱重工業はどちらか一方(C-Xを希望)とした。分担生産では、川崎が主翼と水平尾翼、富士が主翼・水平尾翼・垂直尾翼・翼胴フェアリング・C-Xのバルジ、三菱が中胴・後胴・垂直尾翼、さらに新明和工業・日本飛行機・昭和飛行機・ジャムコが各部品を希望、計7社が参加を表明した。11月26日に防衛庁は主契約企業に川崎を選定したと発表、「次期輸送機及び次期固定翼哨戒機(その1)」(以下C-X/P-X)契約が締結され、三菱・富士を筆頭に各社が分担生産することとなった。平成14年(2002年)度予算の要求410億円が承認され、開発が開始された。
なお、このとき一部で国産旅客機YSXと共通化させると報じられたが、2001年末に防衛庁と川崎は共同で否定している。しかし、自社で計画中の125席クラスジェット旅客機(2007年に実現を最終決定)では、P-Xの主翼技術を利用するとしている。また、日本航空機開発協会(JADC)では、平成14年(2002年)度よりP-XおよびC-Xを民間旅客機(100席~150席クラス)へ転用するための開発調査を行っている。
開発計画は、設計が平成13年度~16年度、試作が平成15年度~21年度、試験が平成18年度~23年度(2012年3月まで)、契約は毎年度ごとに「その1」から「その7」まで7段階、総開発費は若干増額されて3450億円とした。三菱が中胴と後胴、富士重工が主翼と垂直尾翼の開発・分担製造を担当している。中型機2機の同時開発と部品共通化は世界的にも珍しい。
2001年(平成13)度に防衛庁と川崎は「P-X/C-X(その1)」契約を締結し、川崎は社内に大型機設計チーム・MCET(MPA and C-X Engineeiring Team)を設置、三菱・富士・日本飛行機などの出向を含め約650名によって設計作業を開始した。基本図は技本による技術審査にまわされ、2003年(平成15)6月12日に「妥当」と判断された。これにより、三面図と性能諸元が想定できるエンジンの範囲内で確定した。翌日からは細部設計に段階に移行し、製造図を2004年(平成16)に完成させた。また、6月には岐阜県岐阜工場に自社最大規模のハンガーが竣工、C-Xの製造をここで行い、将来の旅客機製造も視野に入れている。12月2日にP-X/C-Xの木製モックアップ(実物大模型)を公開した。
地上試験用の2機(#01・#02号機)と飛行試験機2機(1・2号機)をまず製作、2003年(平成15)度の「C-X/P-X(その3)」により、静強度試験用機体(#01号機)の建造が開始された。2005年(平成17)には富士重工から#01号機用の主翼が納入、川崎で組み立てられた#01号機は2006年(平成18)3月15日に防衛庁に引き渡された。#01号機は空自岐阜基地の第2補給処内に新設された強度試験場で再組み立ての後、耐久試験が行われていた。この静強度試験において、防衛省は2007年(平成19)7月30日に、C-Xの水平尾翼の変形、主脚及びその付近の胴体構造の一部に変形及び接触、胴体の床構造の一部にひび・変形といった不都合事象が複数発生したと公表した[1]。
2004年(平成16)度契約の「C-X/P-X(その4)」により、飛行試験機1号機(シリアルナンバー:88-1201)の建造が開始され、2007年(平成19)3月6日にロールアウト、地上での整備と試験を経て、同年夏に初飛行予定であった。しかし直前の2月に、輸入した米国製リベット(長さ13.5mm)の強度不足が判明し、使用箇所の確認(数千箇所)と交換、再検査をする必要があるためロールアウトは延期され、5月に入って技本ウェブサイトで#201の全体写真が初めて公開された。防衛省航空機課が6月7日に発表した調査結果によれば、交換が必要なリベット数は3663点に上り、ほとんどのリベットは川崎によって交換され、369カ所の交換不能な不適合リベットについては、周囲のリベットをより強度の大きいファスナー類に交換することで処置。別の手段を用いた補強が37カ所、あて板を用いた補強個所が2カ所で、航空機課ではこの改善処置により、機体強度の問題点は解消されたとしている。
2007年7月4日にロールアウト(完成披露式典)が行われたが、静強度試験機の不都合発生により、一日の作業量を増やすなどして9月中に繰り下げて行う予定だった初飛行は、早くて12月となる見通しとなった。2008年(平成20)3月31日の防衛省への納入が遅れるかは不明。空自による飛行試験は岐阜基地の飛行開発実験団にて行われる。
2005年(平成17)度契約の「C-X/P-X(その5)」により、疲労強度試験機(#02号機)の建造が開始された。2006年(平成18)度契約の「C-X/P-X(その6)」では飛行試験機2号機が建造される他、空中受油機能とナイトビジョン・ゴーグル(NVG)対応機器が新たに追加される。2007年(平成19)度予定の「C-X/P-X(その7)」が最終契約となり、一連の開発は冒頭の通り、2012年(平成24)3月の完了を予定している。
設計に参加した延べ人数は、国内航空技術者の3分の1にあたる1800人に上った。また、ロールアウト時点での開発総額は約3500億円とされる。
2011年(平成23)度以降にC-1の減数が始まることに合わせ、当初は量産1号機(通算3号機)を2008年(平成20)度予算で要求する予定であったが、次期戦闘機の選定が先送りされることから、F-15近代化改修の進捗速度を上げる予算を確保する為に1年見送られ、2009年(平成21)度以降に調達が開始される方針である。
中期防衛力整備計画(平成17年度~21年度対象)では、4機のKC-767J(空中給油・輸送機)と共に、8機程度が調達される予定である。C-1を完全に置き換えるため、C-130Hとの兼ね合いもあるが、20数機から40機が配備される見通しで、国際平和協力業務や国際緊急援助活動にも運用される。
航空幕僚監部では、電子情報収集(ELINT)機として使用している4機のYS-11EBの後継として、改造機を4機程度購入することも検討している(#発展を参照)。C-1をベースにした電子戦訓練支援機EC-1も、C-X派生型で置き換えることが検討されているが、はっきりとしていない。C-1試作1号機である試験機C-1FTBについては、2007年4月現在は後継機の計画が無い。C-XとKC-767Jの導入により、C-130Hの一部は余剰となり空中給油・輸送機KC-130に改修される予定だが、更新時期の来る非改修のC-130HをC-Xで置き換えるかは、機種の統一が戦略に与える影響を考慮して検討される。
C-Xは日本が自主開発する機体としては過去最大のサイズとなる。機体はターボファンエンジン双発、主翼は高翼配置、尾翼はT字タイプ、胴体後部に貨物出し入れ口を設け、主脚は胴体下部にバルジ(膨らみ)を設けて収納する等、現行のC-1と同様の形式であるが、サイズ・性能共にC-1を凌駕しており、全長はC-1と比較し1.51倍、全幅は1.45倍、全高は1.42倍、空虚重量は2.5倍、最大積載量は3.75倍、最大速度は1.2倍、エンジン合計推力は約4.24倍となっている。また航続距離は、C-1がペイロード8t搭載時に約810kmなのに対し、C-Xは12t搭載時に約8900kmである(C-130Hは9t搭載時に約8200km)。
C-X開発での基本的なコンセプトは、大搭載量・長距離航続・高速巡航である。C-1での航続距離不足は輸送任務において足かせになっており、C-130Hと共に搭載量も大きくはない。また、旅客機は早くから高速化に取り組んできたため、民間航空路は「高速路線」と化しているが、戦術輸送機は人員や荷物の空中投下が容易なように高翼配置が多いものの、一般的な旅客機の低翼配置に比べて航空力学上の特性により巡航速度が遅くなる。また、車両などの大型貨物を搭載する為に断面積が旅客機より大きくなる事や、広い機内スペースを確保する為にバルジを設けて主脚を収納する事から、機体形状がいびつになって空気抵抗が大きくなり、高速巡航には向かなくなりがちである。C-Xはこれらの課題を考慮し、機体は空気抵抗を抑えた形状となり、主翼は高速巡航に最適化され、エンジンはボーイングやエアバス製の旅客機にも使われている大推力エンジンを採用した。上記の通り機体サイズ・最大積載量・航続距離のいずれの点においてもC-1、更にC-130Hを大きく上回り、現在国際共同開発中のエアバス A400Mに匹敵するが、ターボプロップ推進のA400M、あるいは他のジェット輸送機に比べて巡航速度が速く、民間の旅客機並みの高亜音速で、民間の旅客機と同じ高度や航路を活用して目的地への迅速な輸送が可能となる。またC-1等より大型の機体であるが、大推力エンジンの搭載等によりC-1並みの短距離離着陸(STOL) 性能を維持しており、滑走路の短い地方空港への輸送にも運用できる。
機体形状はC-1同様、曲線を多用したものとなっている。胴体後部の貨物扉は平たい形状で、C-1が観音開き扉を備えていたのに対し、C-Xではそのままローディングランプとなる。降着装置は主脚が片側6輪ずつ12輪の車輪を持つ。主翼前縁にスラットを装備、フラップカウリングは片側に4ヶ所ある。垂直尾翼のラダーは2分割式で、後縁はアンチバランスタブの役割も果たす。水平尾翼は全遊動式で、さらに後縁に動翼を持つ。機首には航法・気象レーダーを搭載。レーダードームの左右横と機体後部にはミサイル警報装置 (MWS) とレーダー警報受信機 (RWR) のセンサーを備える。機体下部に大きく張り出した主脚バルジに補助動力装置 (APU) を持つ。ペイロード搭載量の増加により、大型の手術車や装輪装甲車などの空輸も可能となり、災害や有事の際の実用性が増す。後部ドアには風除けが追加され、空挺部隊降下の際の安全性が高められている。
新たに搭載される戦術輸送飛行管理システムにより、低空飛行の際、コクピットのHUD画面に飛行経路が誘導表示されるほか、経路上の脅威も示唆し、その回避経路を表示することで生存性の向上が図らている。また、省力化搭載卸下システムの採用で、陸上で短時間の積み降ろし作業が行える。操縦系統はフライ・バイ・ワイヤー (FBW) 方式を採用した。
同時に開発されるXP-1哨戒機とは、機体ではコックピット風防、主翼外翼(全体の3分の1)、水平尾翼、システムでは統合表示機、慣性基準装置、飛行制御計算機、APU(動力補助装置)、衝突防止灯、脚揚降システムコントロールユニットの共通化を図り、機体重量比で約15パーセントが共通部品、搭載システムでは品目数で約75パーセントが共通の装備となっており[2]、これにより、開発費を250億程度削減できたとしている。一方、P-Xはフライ・バイ・ライトや国産エンジンなど新技術を採用しているのに対し、C-Xは運用が確立された操縦系・エンジン系を採用しているが、これは将来の民間転用を考慮してのことである(後述)。
機体の配色は、試作1号機(#201)は白地に赤いストライプと胴体下面が灰色の、技本試作機の標準色であるが、試作2号機および量産機はC-1同等の明るめの迷彩色(緑と茶の濃淡)となる予定である。また海外派遣時には、C-130Hに採用された水色一色のような、特別迷彩が施される可能性もある。
機体の開発・製造では、三菱重工業が中胴・後胴・翼胴フェアリング、富士重工業が主翼を分担し、日本飛行機も参加ている。システムでは、搭載レーダーは東芝、管制装置は神鋼電機、自己防御装置は三菱電機、空調装置は島津製作所、脚組み立ては住友精密工業など、国内大手企業が参加している。
装備するエンジンは防衛庁が2002年(平成14)からロールス・ロイス(RR)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の3社からの提案を検討した結果、2003年(平成15)8月にGEのCF6-80C2型エンジン(推力:約27.9t)とナセルシステムを採用した。日本GE社のウェブサイトによると、CF6-80C2のカタログ価格は1基1,000万ドルである。
このエンジンの選定にあたっては、すでに航空自衛隊に導入されているボーイング747-400(政府専用機)やE-767、導入予定のKC-767が同一のエンジンを採用しており、整備面で都合が良いことから決定されたと思われる。海外でも広く普及している為、渡航先での整備拠点もあり、また日本国内のエアラインもボーイング製の機体と共に、同系統のエンジンを600基以上採用しており、形式は新しく無いが、信頼性の高さと国内での運用経験も選定の根拠とされている。ちなみに、XP-1のエンジン(F7-10)は純国産であり、輸入エンジンのC-Xとは対照的である。
エンジンは防衛省が商社山田洋行(営業年数や年間平均売り上げから出した企業格付け(A~D)でAランク)を随意契約で代理店としてGE社から購入し、機体を組み立てる川崎へ支給されることになっており、2004年(平成16)度と2005年(平成17)度に5基が納入された。しかし、山田洋行の経営陣が株式をめぐって分裂し、GEエンジン担当者を含む約30名が2006年(平成18)9月に日本ミライズ(Dランク)を設立。GEは2007年(平成19)7月に山田洋行との契約を解消して、日本ミライズを代理店とした。C-Xエンジンについては、防衛省は試作機用予備エンジン1基について、官製談合事件の余波により随意契約を見直し、同年8月に日本ミライズ以外の数社に競争入札させたが、条件(ランクがA~C、GEと代理店契約を結ぶこと)を満たす企業がなく不調に終わった。このため、日本ミライズと随意契約を結ぶことを検討しているが、防衛省元事務次官と日本ミライズとの癒着が当初から省内で疑惑化しており、事務次官が8月末に退官した後は、具体的に進められていない。量産機以後の供給体制は未定である。