| この項目は現在進行中の事象を扱っておりますが、ウィキペディアはニュース速報ではありません。性急な編集をせず事実を確認し、正確な記述を心がけてください。またウィキニュースへの投稿も検討してみてください。なお、この内容は不特定多数のボランティアにより自由に編集されていることを踏まえ、自身の安全利害に関わる情報は自己責任でご判断ください。 |
| このページの名前に関して改名が提案されています。 議論はノート:P-X (航空機)を参照してください。 |
P-X (Patrol aircraft-X) は、防衛省・海上自衛隊における「次期固定翼哨戒機」の概念である。2007年現時点では、防衛省技術研究本部と日本の航空機メーカー、川崎重工業が開発・製造しているターボファンエンジン4発の中型機で、海上自衛隊がP-3Cの後継機として使用する哨戒機である。2007年(平成19)9月28日の初飛行に際し、試作機にXP-1の型式名称が与えられた。
目次 |
防衛庁(現防衛省)では川崎重工業でライセンス生産したアメリカ合衆国の対潜哨戒機ロッキードP-3Cを利用してきたが、更新時期が迫ったために次期固定翼哨戒機(当初 MPA と呼称)を検討、国内技術の育成を考え、2000年(平成12)に国産とすることを発表、来年度予算を取得した。C-X(次期輸送機)と同時開発で、開発費は両機合わせて3400億円とされた。
哨戒機の国内開発は日本の航空産業界長年の希望であり、これまでも川崎重工業のP-2J対潜哨戒機や新明和工業PS-1対潜哨戒飛行艇を生産した。また1968年(昭和43)からのP-2J後継機PX-L選定では、当初政府が国内開発の方針を採ったことから、川崎は国産4発ジェット哨戒機を構想して実物大モックアップまで製作して意気込みを見せたが、防衛予算圧縮と米国機採用の圧力を受けた田中内閣の政治判断により1972年(昭和47)に国内開発は撤回、1977年(昭和52)にP-3Cのライセンス国産が決定し、現在に至る。
平成13年度予算の要求53億円は満額が認められ、2001年(平成13)初めより技術研究本部(技本)によって研究が行われた。5月25日に航空メーカーを選定する旨を官報にて告示、30日まで希望メーカーを募集した。応募した8社を招いて31日に説明会が開催され、7月31日午後5時を期限として、スペックの提出を行わせた。なお、1社は希望を撤回した。
主契約では川崎がP-X・C-Xの両機製作を希望、富士重工業が両機製作の新会社設立を提案、三菱重工業はどちらか一方(C-Xを希望)とした。分担生産では、川崎が主翼と水平尾翼、富士が主翼・水平尾翼・垂直尾翼・翼胴フェアリング・C-Xのバルジ、三菱が中胴・後胴・垂直尾翼、さらに新明和工業・日本飛行機・昭和飛行機・ジャムコが各部品を希望、計7社が参加を表明した。11月26日に防衛庁は主契約企業に川崎を選定したと発表、「次期輸送機及び次期固定翼哨戒機(その1)」(以下C-X/P-X)契約が締結され、三菱・富士を筆頭に各社が分担生産することとなった。平成14年度予算の要求410億円が承認され、開発が開始された。
なお、このとき一部で国産旅客機YSXと共通化させると報じられたが、2001年末に防衛庁と川崎は共同で否定している。しかし、川崎で計画中の125席クラスジェット旅客機(2007年に実現を最終決定)では、P-Xの主翼技術を利用するとしている。また、日本航空機開発協会 (JADC) では、平成14年(2002年)度よりP-XおよびC-Xを民間旅客機(100席~150席クラス)へ転用するための開発調査を行っている。
開発計画は、設計が平成13年度~16年度、試作が平成15年度~21年度、試験が平成18年度~23年度(2012年3月まで)、契約は毎年度ごとに「その1」から「その7」まで7段階に分かれ、総開発費は若干増額されて3450億円とした。防衛庁ではすでに、1990年代から国内の電子機器メーカーとともに哨戒機器の研究を行ってきており、P-Xは機体・エンジン・内装を含め、完全な国産機である。中型機2機の同時開発は世界的にも珍しい。
2001年(平成13)度に防衛庁と技本・川崎の間で「C-X/P-X(その1)」が契約され、川崎は社内に大型機設計チーム・MCET (MPA and C-X Engineeiring Team) を設置、三菱・富士・日本飛行機などの出向を含め約650名によって設計作業を開始した。基本図は防衛庁技術研究本部による技術審査にまわされ、2003年(平成15)6月12日に「妥当」と判断された。これにより、三面図と性能諸元が想定できるエンジンの範囲内で確定した。翌日からは細部設計に段階に移行し、製造図を2004年(平成16)に完成させ、12月にP-X/C-Xの木製モックアップ(実物大模型)を公開した。また、同年11月から12月にかけて搭載する国産ターボファンエンジンXF7-10(石川島播磨重工業主契約、後述)をC-1FTBに搭載しての飛行試験が技本によって行われた。
2002年(平成14)3月から2005年(平成17)3月にかけて、機体設計と同時に、同盟国アメリカ海軍を中心とした各国軍との相互運用性(インターオペラビリティ)を確保する為、日米両者による「P-3C後継機の電子機器に関する共同研究」が行われた。この研究はP-Xと共に米海軍の次期哨戒機P-8Aにも反映され、P-3Cの利用によって共通性を持っていた両者は、機種更新後も運用共通能力が確保され、これまでと同等の作戦を行うことが出来るとされている。この研究は2006年(平成18)9月末に終了が確認された。
2003年(平成15)度に契約された「C-X/P-X(その3)」により、静強度試験機#01号機の建造が開始された。2006年(平成18)3月より技術研究本部第3研究所(4月に組織改変があり、航空装備研究所へ改組)に搬入、10月6日の完成検査によって「妥当」(合格)と判断され、10月13日に納入された。この静強度試験において、防衛省は2007年(平成19)7月30日に、P-Xの水平尾翼の一部や胴体の床構造の一部が変形したと発表した[1]。
2004年(平成16)度に契約されたC-X/P-X(その4)」により、飛行試験機1号機(シリアルナンバー:5501)の建造が開始された。2007年(平成19)3月のロールアウト、同年夏の初飛行を予定していたが、直前の2月に、輸入した米国製リベット(長さ13.5mm)の強度不足が判明し、使用箇所の確認(数千箇所)と交換、再検査をする必要があるためロールアウトは延期され、5月になって技本ウェブサイトで飛行試験1号機の全体写真が初めて公開された。防衛省航空機課が6月7日に発表した調査結果によれば、交換が必要なリベット数は161点に上り、ほとんどのリベットは川崎によって交換されたが、4カ所の不適合リベットは周囲のリベットをより強度の大きいファスナー類に交換することで処置した。航空機課ではこの改善処置により、機体強度の問題点は解消されたとしている。またエンジンの地上試験中にベアリングが損傷した為、試作機のエンジン転載に時間を要した。不具合についてはベアリング保持器の形状を変更することで解決したとしている。
ロールアウト(完成披露式典)は2007年7月4日に行われた。8月29日(大安)に実施される予定だった社内初飛行は、静強度試験の結果により延期され、9月28日に川崎重工に隣接する岐阜基地で、川崎社員9名によって約1時間にわたり行われた。この飛行の際、呼称はXP-1とされた[2]。
2005年(平成18)度にが契約された「C-X/P-X(その5)」により、疲労強度試験機(#02号機)と飛行試験機2号機の建造が開始された。疲労強度試験は宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 航空宇宙技術センター飛行場分室で行われる。2007年(平成19)度予定の「C-X/P-X(その7)」が最終契約となり、一連の開発は冒頭の通り、2012年(平成24)3月の完了を予定している。
開発には国内各社から延べ1800名の技術者が参加した。なお、ロールアウト時点での開発総額は3500億円となっている。
中期防衛力整備計画(平成17年度~21年度)では4機の導入を予定しており、2010年(平成22)度以降にP-3Cの減数が始まることに合わせ、2008年(平成20)度予算の概算要求に4機(量産1号機/通産3号機以降)分679億円が盛り込まれた。
海自の作戦航空機全体の機体数は8個航空隊170機であるが、中期防によって2007年(平成19)度末に1基地1航空隊の4個飛行隊へ集約され機体は160機、新防衛大綱では150機(内、P-3Cは80機)まで削減される予定である。防衛庁ではP-3Cを完全に置き換える方針であるが、P-3Cよりも航続距離・連続哨戒時間が向上したXP-1の導入により、削減されるP-3Cよりもさらに少ない約70機で能力を維持できるとしている。
なお、海自ではP-3Cの派生型をいくつかの用途に使用しているが、これらの後継機もXP-1をベースに改造開発されることが有力視されている。うち、作戦機であるEP-3(新造5機)・OP-3C(改造5機)については、2005年(平成17)より耐用命数設定の為の技術検討が行われており、後継機選定のスケジュール設定の目安となるデータを収集している。これらがXP-1で代替されれば、製造数は80機程度となる。
哨戒機としては比較的珍しいターボファンエンジン4発の中型機で、P-3Cを若干大きくした程度である。ジェット機ならではの高速性を求めて、主翼・尾翼共に後退翼を備え、主翼は低翼配置、着陸装置の車輪は胴体と主翼の付け根に設置されており、4発であることを除けば、外観は一般的なジェット旅客機と変わらず、ボーイング737やエアバスA320とほぼ同クラスの規模がある。なお、これらの形状は1960年代末のPX-L検討で川崎が提案した機体の特徴(4発ジェット機)をいずれも引き継いでおり、川崎がP-3Cの生産中も国産哨戒機の構想を持ち続けていたことが伺える。この4発エンジンにより、哨戒機器の電源確保や、低高度飛行での騒音軽減・燃費低減、任務時の生存性向上がはかられる。
エンジンはIHIのXF7-10(量産機は F7-10)が搭載される。このエンジンを含め、機体は全て国産技術となっている。機上整備システムおよび同システムの地上解析装置も川崎によって同時開発される。
操縦系統は、センサー類や精密電子機器との干渉を避ける為に、光ファイバーを使用したフライ・バイ・ライト (FBL) 方式で、海自において装備評価試験機UP-3Cで実験を繰り返したものである。FBLの採用は自衛隊機初だけでなく、実用機としても世界初の試みであり、配線の軽量化、消費電力の低減もはかられる。
同時に開発されるC-X輸送機とコックピット風防、主翼外翼(全体の半分)、水平尾翼、統合表示機、慣性基準装置、飛行制御計算機、補助動力装置 (APU) 、衝突防止灯、脚揚降システムコントロールユニットを共通化し、機体重量比で約25パーセントが共通部品、搭載システムでは品目数で約75パーセントが共通の装備となっている[3]。これによって開発費が250億円削減できたとしている。
飛行性能はP-3Cから大きく向上しており、巡航速度が速くなることによる作戦空域到達時間の短縮、単位時間当たりの哨戒面積の向上が見込まれ、防衛省は機体数が削減されても哨戒能力が落ちることは無いとみている。
機体の配色は、試作1号機(5501)が白地に赤のストライプと胴体下面が灰色の、技本試作機の標準色だが、試作2号機および量産機では、低視認性を重視して近年の海自機で多様されるP-3C同等の灰色迷彩が施される。
機体の開発・製造では、三菱が中胴と後胴、富士重工が主翼と垂直尾翼を担当し、日本飛行機も分担生産に参加している。システム面では、搭載レーダーは東芝、音響処理装置は日本電気、管制装置は神鋼電機、自己防御装置は三菱電機、空調装置は島津製作所、脚組み立ては住友精密工業など、国内大手企業が参加している。
ミッション用の機器類は機体の飛行試験と並行して開発される。技術研究本部では1990年代より固定翼・回転翼哨戒機用の電子機器を自主開発しており、XP-1装備品もこの延長にあるものになると思われる。米軍との相互運用性確保の為、米軍P-8Aとの共通性を持たせることが決定している。
機内のレイアウトはP-3Cに準じたものとなり、コックピット後方の戦術士 (TACO) 席はバブルウインドウとなっている。胴体上部にESMアンテナが設置され、2つの半球状フェアリングが特徴的である。P-3Cと同じく、機体後部には磁気探知装置センサー (MAD) を収納したテイルブームを備える。下方の目標探知能力を強化する為、国産の新型フェイズド・アレイ・レーダーが採用され、機首レドーム内と前脚格納部付近のフェアリングに設置されている。このレーダーにより、P-3Cよりも高高度から微小な目標を探知することが可能となる。機首下部にはSH-60Kと同様に赤外線探査装置 (FLIR) ターレットを持つが、普段は機首内に格納されており、使用時に機外へ出す。ソノブイ発射口は機体下面、主脚の後部にあり、海面に投下した複数のソノブイの音響や高性能レーダーなどからの情報を一元処理し、潜水艦や不審船を探知する戦闘指揮システムに人工知能を搭載する。また胴体下面には敵味方識別装置 (IFF) アンテナをはじめ、通信・航法・ソノブイ電波受信用のアンテナが設置されている。
武装は、P-3C同様に機首の下部に格納庫(いわゆる爆弾倉)を持ち、対潜爆弾や爆雷・魚雷を投下できる。主翼の下にはいくつかのハードポイントが設置されており、最大8本の対艦ミサイルなどを装備できる。
XP-1のジェットエンジンはXF7-10(仮称)ターボファンエンジンで、これは技本が石川島播磨重工業(現IHI)を主契約企業として2000年(平成12)度から開発を開始したもので、開発総額は200億円以上。2004年(平成16)10月に防衛庁の装備審査会議を経て10月28日に正式に採用を決定した。
XF7-10は離陸時推力が1基あたり約6トン (約58.8kN) と、一般的な50~100席クラス旅客機用エンジンと同水準で、バイパス比は8.5。国産初のスラスト・リバーサー(逆噴射装置)を備えている他、省燃費・低騒音を特徴とする。IHIが先行して開発したXF5-1の技術が移転されており、日米英独で国際共同開発した民間用の同クラスエンジンV2500の経験も役立った。IHIがタービンなど基幹構成品を開発・生産するほか、川崎と三菱も部品を供給する。
推力でいうと空自のC-1輸送機に搭載するJT8D-9と同等で、同クラスの現用エンジンはGEのCF34-8E(エンブラエル170が搭載)程度しか存在せず、選択肢の少なさから国内開発となった。
P-Xでは主翼下パイロンに4基が搭載される。なお、試作機はロールアウト時には重量軽減のためにスラスト・リバーサーは非装備であったが、初飛行では装備されたエンジンを使用した。量産機では2基のみに設置することも検討している。